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2008/07/04

ソナくそ第5回 お題(続)「クロイツェル・ソナタ」

前回「クロイツェル」というのは人の名前だと書きましたが、具体的には、この曲を捧げた当時著名なヴァイオリニストの名前です。でも、このヴァイオリニストはフランス人なので、本来は「クレゼール」と読ませるのですが。献呈文には「我が友」なんて書かれているそうですが、実際に親交はほとんどなく、要するに、この曲の初演時のパートナー「ブリッジタワー」というヴァイオリニストとケンカしたために、「お前になんかやらん、クロイツェルにくれてやるわい」と、あてつけがましく献呈文を書いたのではないでしょうか?

ケンカの理由はよくは分かっていません。女絡みというのが専らの噂で、当時フ○イデーがあれば、きっと「ベートーヴェン、ブリッジタワーと一人の女を巡り断絶」というゴシップを書いたでしょう。でもね、ベートーヴェンはそんなオンナごときでとやかく言う俗物じゃあないよ。音楽上での対立があったと考えるのが普通でしょう。私は実はそれだけではないかも?と思っていますが、これについては、何の確たる証拠もありませんので、とやかく口出しはいたしません。ただ、ベートーヴェンにとっては非常に旗色の悪い話だと思います。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

さて、では前回の続き、今度こそ本題に入れるでしょうか?

主部(Presto)

Kreutzer003 譜例3(画像クリックで拡大)

(19小節~)序奏に続く、俗に言う「第一主題」と呼ばれているもの。このモティーフの最初の部分、cは、言うまでもなく、序奏の譜例1(第4回参照)b2のモティーフの反行形。序奏の中間あたりから、b2(順行形)との掛け合いのように、こいつがひょこっと顔を出し、どんどん育ってゆきます。そして目出度く「第一主題」の顔となったわけです。このcとb2の掛け合いは、後でちょこちょこ出てきますので、覚えておくと良いかも、ですよ!

序奏のときに申し上げた、「モティーフのケツは重要」と言うのは、「第一主題」でも垣間見えていて、上の譜例fも、曲中展開させて使われます。でも、今回は「ケツで掴む」という役割は序奏の段で既に果たされていますので、大して重要ではありません。中間のeもしかり、です。

Kreutzer004 譜例4(画像クリックで拡大)

(35小節~)いわゆる「第一主題」の副主題、移行部、推移部とも言いますが、ま、呼び名なんぞどうでも良いです。譜例中○印がメロディーライン。これ自体が特に意味を成すわけではありませんが、激しいオクターブの連続の奥に姿を現す、このなだらかな音階進行は、この後の「第二主題」への重要な伏線となります。そして、その後再びcとb2の掛け合いで「第一主題」のヤマ場を築きます。文字通りキッチリ「締め」る訳です。

Kreutzer005 譜例5(画像クリックで拡大)

「第二主題」(91小節~)激しい嵐が過ぎ去り、束の間の安息、といった感じです。先の第一副主題の音階進行を関連させていますが、さらに突っ込んでテーマの構成要素を見てゆくと、何のことはない、cとb2の組み合わせであることが分かります。つまり平和なムードの中に「火種は確実に燃えている」と言えばよいでしょうか?最後は突如尻切れトンボのように消えていってしまう。まさに「束の間」です。

Kreutzer006 譜例6(画像クリックで拡大)

「第二主題」の副主題A(117小節~)、再び闘いの火の手は上がる・・・? 譜例3のeの反行形から派生しています。iの部分の分解は完全なコジツケなので気にしないで下さい。でもhと対をなす音形は、iの形しかない。hとiは同じ和声進行上に乗っておりますから、音形を気にしなくても一対のものである事は容易に想像がつきます。で、提示部全体のクライマックスへは、フレーズの「ケツ」にあるiをどんどん引っ張って持ち上げてゆく事で盛り上げる・・・序奏部~「第一主題」への移行と同じスタイルを取っていますが、同じスタイルにしたのは、もちろん意図があってのことなのです。

Kreutzer0071 譜例7-1(画像クリックで拡大)

「第二主題」の副主題B(144小節~)、「第三主題」と言う風に呼ぶ事もありますが、どっちでも同じです。てか、私にはどちらの呼び名も不適当・・・これはまた後で理由を言いますけど、とりあえすこのメロディー。いいですねえ。最高にカッコいいぞ、これは。13小節と言う、非常に息の長いフレーズです。

・・・と言うか、ここで初めて完全なるメロディーと呼べる物体が現れた、という感じがしませんか?(「感じ」るだけでなく、論理的にも証明できるのですが、それはおいといて)「第一主題」「第二主題」とも、メロディーというにはあまりに断片的過ぎ、ただ、モティーフを重ねて行っているだけでした。なぜ、こんなおいしいメロディーを「第一主題(通常一番重要なテーマ)」の部分に出してこないのか?・・・そうか「ケツが大事だ!」って早合点しないで下さい。ま、それもあるんですけど、この事は後でゆっくり述べるとして、先に進みます。

この後、176小節より提示部の「終止部(エンディング)」です、ややこしい言い方だけど。主に第一副主題を使って・・・もちろん闇雲にこれを再利用したわけではなく、この「第二副主題B」を「第一主題」と同じように見立て、同じものを終止に添えてやる事によって、この「第二副主題B」の重要性を再認識させているのです。・・・分かりにくい表現ですみません。・・・うーんと、要するにベートーヴェンは、「第二副主題B」と「第一主題」は同じくらい大事!って言っているのです。さらに付け加えると、大事だからこそ、「第一主題」と「第二副主題B」への「持って行き方」(つまりこの場合それぞれ「序奏の後半部」と「第二副主題Aの後半部」の事)も同じ手法を用いているのです。

「一般的なソナタ形式のフォーム」に則った提示部の分解はこれでおしまいです。ですが、やっぱり私は判然としませんね。「第二副主題B」の位置付けが。シンデレラではありませんが、コレほどまでに気高く勇壮なメロディーなのに、なんだか提示部の中で継子扱いされているような・・・。

でも、ちゃんと聴けば、そんな事はない。なまじっかヘンな「分析」をするから、これを継子扱いしてしまう。そんなこんなを、次回にだらだら書く事にします。

そうさ、どれだけでも続くのさ!

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