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2007/10/09

フルトヴェングラーかカラヤンか?その3 お題「コリオラン」

さて、前回、前々回と、話がそれまくってしまったので、今回はようやく本題に入ります。

この2人の聞き比べのお題がベートーヴェンちゅうのは、実はあんまり適切ではないんだろうけど(カラヤンならもっと得意な曲があるので)、構わず進めます。

当然の事ながら、両名とも、この曲の録音は複数残しておりますが、たまたま私の手元にあるものだけで比較試聴を行います。そのため、できるだけ、演奏自体の優劣は語らず、この2人のアプローチに対する私の印象を中心に述べてゆこうと思います。

ではトップバッターはカラヤンから!!

お題>ベートーヴェン作曲 序曲「コリオラン」作品62

カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー、1965年ベルリン・イエス・キリスト教会での収録

一聴して分かるのは、カラヤン独特のレガート重視の弦合奏。どこまでもなめらか。彼の華麗なる手さばきが目に浮かんできますね。教会収録ならではのウワンウワンな残響がさらにその効果に拍車をかけます。男性的な第1テーマからして、野性味の薄い夢幻的蠱惑的なもので、おかげで、ベートーヴェンが細かく楽譜に指示したアーティキュレーション(スラーとかアクセント、スタッカートみたいなヤツ)が殆ど生きてきません。

テンポは四分音符=144くらいで、Allegro con brio(速く生き生きと)という速度指定としては心持ち遅く感じます。普通の人がイメージする「カラヤンのベートーヴェン」のテンポ感からすると、はぐらかされた感じがするかもしれません。またイントロから第1テーマの部分にしばしゲネラルパウゼ(全休止、つまり無音部分)が現れますが、カラヤンはこれの扱いに無頓着で、全般的に楽譜指定の長さより2割方短めです。「音のない部分は音楽じゃねぇや」とでも言っているかのようです。

また、基本的には全体を通してイン・テンポ(同じテンポ)ですが、フレーズの変わり目に楽譜に指定のないリタルタンド(段々遅く)を加える程度は「常識」的に行われているのと、第1テーマの盛り上がりの部分(CDで1:05)や、第2テーマの開始部分(同1:25)などは、それと分からぬくらいにテンポを落としていて、もちろん非常に効果的です。

私がカラヤンの演奏で感心するのは、「内声をよく聴かせている」事です。後述するフルトヴェングラーとの最大の違いはここで、「とにかく楽譜に記されている音はひとつたりともおろそかにしない」印象が強く、たまにホルンの強奏がやかましく思う事もありますが、概して、ヴィオラや木管、金管ともよく鳴っています。カラヤンで聴くと、巷ではあまり評判のよくない「ベートーヴェンのオーケストレーション(つまりポップスで言うところのアレンジ能力)」が実は非常に分厚く効果的であるのが良く分かります。音色の作り方も低弦(チェロ、コントラバス)を中心に、きれいなピラミッドバランスで、安定感があります。

また、テンポの変動やフレージング自体は奇をてらったところは少なく、楽曲の解釈は良い意味で「まっとう」であり、ベートーヴェンの意図を良く出していると思います。問題があるとすれば、彼のレガート重視の指揮スタイルを、ベートーヴェンでも押し通そうとして無理が生じた、という事でしょう。「オレは作曲家の僕(しもべ)になんぞならん。オレ様が一番エライんだ。」というカラヤンのメッセージがいやが上にも聞こえてきそうです。

全体を通して、非常に重厚な演奏で、ライブ収録ではないので熱狂度は少ないですが、例えばコーダ(7:04~)の部分とか・・・、皆まで言うと聴く方の楽しみを奪ってしまうので言いませんが、私はカラヤン演奏のこの部分は好きです。

しっかし、カラヤンはなぜベートーヴェンの交響曲演奏では、こうしたアプローチをとらなかったのでしょうね?

一般論ですと、カラヤン自身が、交響曲のような一般にアピールする機会の多い作品に、快速特急もしくはスポーツカーのごとく「カラヤンスタイル」を意図的に強調して自分のイメージ作りを高めていった、ということでしょうね。要するにカラヤンにとってベートーヴェンだろうとモーツァルトだろうと、ヒケラカシのための「道具」にすぎなかった。もしくは、自分が「トスカニーニの後継者」だと聴衆に思わせたかったからか?

それに比べて序曲なんてのはマイナーですから、もう少し自分の考える(ビジネスとは絡めない)ベートーヴェン演奏を目指した、と言う事なのかな?

さて、次回はフルトヴェングラーです。

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